チベット仏教講座」カテゴリーアーカイブ

石仏板裏面の試訳

石仏板裏面の試訳(多くの方からチベット語の意味を知りたいとの希望により)

༄༅།།ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ་ཆེའི་གསོལ་འདེབས་བསམ་པ་ལྷུན་གྲུབ་མ་འི༔
パドマサンバヴァ祈願文・任運自成(自然成就)

ཨེ་མ་ཧོ༔
エマホ! なんと素晴らしい!

དག་པའི་ཞིང་མཆོག་ལྷོ་ནུབ་དཔལ་རི་ནས༔
清浄なる素晴らしき西南の聖地吉祥山に

རྒྱལ་བ་ཀུན་འདུས་གུ་རུ་པདྨ་འབྱུང་༔
諸仏の体現者、グル・パドマサンバヴァ

ད་ལྟ་དུས་ངན་སྙིགས་མའི་སྐྱེ་འགྲོ་ལ༔
私たち悪世の衆生は

ཐུགས་རྗེས་གཟིགས་ནས་བདག་ལ་དགོངས་སུ་གསོལ༔
あなたの深き慈悲に抱かれ、守護されることを懇願します

སྤྱི་གཙུག་ཉི་ཟླ་པདྨའི་གདན་སྟེང་དུ༔
頭頂に現れた日と月の座の上に

རྩ་བའི་བླ་མ་ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ༔
根本ラマ、オーギェン・リンポチェは

བཀའ་བརྒྱུད་བླ་མ་རྣམས་ཀྱི་འཁོར་གྱིས་བསྐོར༔
法脈の師の方々と眷属たちに囲まれておられます

གསོལ་བ་འདེབས་སོ་ངན་ལས་དག་པར་མཛོད༔
一切の悪しきカルマを浄化されることを懇願します

བསམ་པ་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པར་བྱིན་གྱིས་རློབས༔
全ての願いが自然と成就するよう御加持願います

ཤར་ཕྱོགས་ལྟ་ན་སྡུག་པའི་ཕོ་བྲང་ནས༔
東方浄土の清浄なる宮殿の中に

སངས་རྒྱས་སྨན་བླ་ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ་ཆེ༔
薬師如来姿のオーギェン・リンポチェは

སྨན་བླ་མཆེད་བརྒྱད་རིག་འཛིན་འཁོར་གྱིས་བསྐོར༔
薬師部眷属の光明八尊に囲まれておられます

གསོལ་བ་འདེབས་སོ་ནད་རིགས་ཞི་བར་མཛོད༔
全ての疫病を消滅することを懇願します

བསམ་པ་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པར་བྱིན་གྱིས་རློབས༔
全ての願いが自然と成就するよう御加持願います

ཡེ་ཤེས་མེ་རི་འབར་བའི་ཕོ་བྲང་ནས༔
智慧の炎が燃え盛る宮殿の中

ཆེ་མཆོག་ཧེ་རུ་ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ་ཆེ༔
憤怒のヘルカ、オーギェン・リンポチェは

ཡི་དམ་ཁྲོ་བོ་ཁྲོ་མོའི་འཁོར་གྱིས་བསྐོར༔
憤怒本尊ヤブユム眷属に囲まれておられます

གསོལ་བ་འདེབས་སོ་དངོས་གྲུབ་བསྩལ་དུ་གསོལ༔
世俗と勝義の成就をお与えくださるよう懇願します

བསམ་པ་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པར་བྱིན་གྱིས་རློབས༔
全ての願いが自然と成就するよう御加持願います

མཁའ་སྤྱོད་དག་པ་འོད་ལྔའི་ཕོ་བྲང་ནས༔
清浄な五族のダーキニーの光明宮殿の中に

མཁའ་འགྲོའི་གཙོ་བོ་ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ་ཆེ༔
ダーカ主尊姿のオーギェン・リンポチェは

ཡེ་ཤེས་འཇིག་རྟེན་ཌཱཀྐིའི་འཁོར་གྱིས་བསྐོར༔
智慧と世間ダーキニーの眷属に囲まれておられます

གསོལ་བ་འདེབས་སོ་ཕྱི་ནང་བར་ཆད་སོལ༔
内と外の諸々の障害が取り除かれることを懇願します

བསམ་པ་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པར་བྱིན་གྱིས་རློབས༔
全ての願いが自然と成就するよう御加持願います

དགྲ་བགེགས་གདུག་པ་བསྣོལ་བའི་གདན་སྟེང་ནས༔
調伏した邪悪な魔たちを積み重ねた座の上に

ཆོས་སྐྱོང་གཙོ་བོ་ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ་ཆེ༔
護法尊姿のオーギェン・リンポチェは

ཡེ་ཤེས་འཇིག་རྟེན་ཆོས་སྐྱོང་རྣམས་ཀྱིས་བསྐོར༔
智慧と世間の護法眷属に囲まれておられます

གསོལ་བ་འདེབས་སོ་དུས་ཀྱི་གཡོ་འཁྲུགས་ཟློག༔
五濁悪世の不安と戦乱が鎮まり回避されることを懇願します

བསམ་པ་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པར་བྱིན་གྱིས་རློབས༔
全ての願いが自然と成就するよう御加持願います

མི་འགྱུར་རིན་ཆེན་གཏེར་གྱི་ཕོ་བྲང་ནས༔
不変の宝蔵宮殿の中に

དངོས་གྲུབ་འབྱུང་གནས་ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ་ཆེ༔
任運成就の本性であるオーギェン・リンポチェは

ནོར་ལྷ་གཏེར་བདག་རྣམས་ཀྱི་འཁོར་གྱིས་སྐོར༔
財宝の神々の眷属に囲まれておられます

གསོལ་བ་འདེབས་སོ་དངོས་གྲུབ་ཆར་ལྟར་ཕོབས༔
諸々の成就が雨の如く降り注がれることを懇願します

བསམ་པ་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པར་བྱིན་གྱིས་རློབས༔
全ての願いが自然と成就するよう御加持願います

ཁ་བའི་ཡུལ་ལྗོངས་བོད་ཀྱི་ཞིང་ཁམས་སུ༔
雪山チベットの殊勝なる聖域に

ལྷ་སྲིན་དམ་བཏགས་ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ་ཆེ༔
全ての世俗の魔と悪神を調伏したオーギェン・リンポチェは

བཀའ་སྲུང་སྡེ་བརྒྱད་གཞི་བདག་འཁོར་གྱིས་བསྐོར༔
仏法を守る土地神の八部眷属に囲まれておられます

གསོལ་བ་འདེབས་སོ་མཐའ་ཡི་དམག་དཔུང་ཟློག༔
我が国土から魔の軍勢を調伏することを懇願します

བསམ་པ་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པར་བྱིན་གྱིས་རློབས༔
全ての願いが自然と成就するよう御加持願います

བདེ་ཆེན་པདྨ་འོད་འབར་ཕོ་བྲང་ནས༔
悟りの喜びに満ちた蓮華光明宮殿の中に

འོད་དཔག་མེད་མགོན་ཨོ་རྒྱན་རིན་པོ་ཆེ༔
阿弥陀仏姿のオーギェン・リンポチェは

ཕྱོགས་བཅུའི་སངས་རྒྱས་སྲས་བཅས་འཁོར་གྱིས་བསྐོར༔
偏在する諸仏と諸菩薩の眷属に囲まれておられます

གསོལ་བ་འདེབས་སོ་པདྨ་འོད་དུ་དྲོངས༔
蓮華光の極楽浄土に迎えられることを懇願します

བསམ་པ་ལྷུན་གྱིས་འགྲུབ་པར་བྱིན་གྱིས་རློབས༔
全ての願いが自然と成就するよう御加持願います

ཨོཾ་ཨཱ་ཧཱུྃཿ བཛྲ་གུ་རུ་པདྨ་སིདྡྷི་ཧཱུྃ༔
オン・アー・フン・バジュラ・グル・ペマ・シッディ・フン

སྟེང་ནས་ཉི་ཟླ་གཟར་སྐར་ཆོ་འཕྲུལ་བཟློག༔
天空の日・月・星がもたらす災難を阻止したまえ

འོག་ནས་ས་བདག་ཀླུ་གཉེན་གདུག་རྩུབ་ཟློག༔
地下の龍神・諸霊が引き起こす疫病を阻止したまえ

བར་ནས་བཙན་དང་མ་མོའི་གནོད་པ་བཟློག༔
地上の世俗の神・女神がもたらす障害を阻止したまえ

འབྱུང་བ་བཞི་ཡི་ནད་རིགས་ཐམས་ཅད་ཁ་ཐུམས༔
地水火風四大由来の疫病を全て消し去りたまえ

ཕྱོགས་བཞི་མཚམས་བརྒྱད་ཀྱི་མཐའ་ཡི་དམག་དཔུང་ཐམས་ཅད་མཱ་ར་ཡ་བྷྱོ་བྷྱོ་བཟློག་བཟློག༔
世界のあらゆる国土に攻め入る魔の軍勢を、全て打ち負かしたまえ! 
マラヤジョージョーローロー

石仏板裏面下部の試訳

ニメ・トンジョ・リンポチェは、未来の困難な時代へのグル・パドマサンバヴァから霊示を授かったことで、グル・リンポチェの不滅の金剛杵を持つグル・パドマサンバヴァの法力を、龍の年内に千枚の御影の石仏板に刻み、世界各地に奉納することを誓願されました。この石仏板には、世界平和を願う末法を正法に返す加持力があり、これを見るすべての衆生が解放される霊力があります。

生成AIと仏教研究 ー大正新脩大蔵経100年SAT30年ー

先日「生成AIと仏教研究・大正新脩大蔵経100年SAT30年」のシンポジウムに、飛騨の山奥から参加しました。
BDRCなど欧米の経典収集OCRデジタル化の最前線、台湾タイなどのAI実装のDH、特にUCバークレーのセバスチャン氏のダルマミトラのAI翻訳の成果など、とても素晴らしい国際的な最先端の研究発表でした。
「AIは仏教学にとって呪いか祝福か?」の考察も面白い!

現在のLLMやRAGそして日々進化するAI技術が更に深まり、今後30年100年先のフェーズ10(私見)に、これらの研究が「AIブッダマイトレーヤ」への大きなチャレンジと、明るい期待を抱かせるオープンソースのビジョン交流の場でした。

パドマサムバヴァ石仏板の奉納プロジェクト

パドマサムバヴァ石仏板の奉納プロジェクト

『鉄の戌年における暗黒の時代の妨げを回避するための警句(全文参照)』に基づいた菩薩行の参加を求めます。
 この危機を回避するために、チベットアムド地方のニンマ派のニメ・ドンジョ・リンポチェ(マイワ寺)が日本に1000体のグル・リンポチェ石仏板を無償配布する事業に共鳴し、日本で有志による「石仏板奉納プロジェクト」が始まりました。
奉納参加ご希望の方は、メッセージをください。

石仏板奉納の要旨は以下の通りです。

1)奉納者の地縁仏縁血縁のある(産土神国御霊)寺社仏閣神社の管理責任者の理解を得て、奉納することを希望します。
2)土地神産土神国御霊の聖地霊地の山頂、森林、海、川、谷の自然霊地に奉納すること(土地所有者許可か奉納者責任で)を希望します。
3)今後もパドマサムバヴァの修行ができる緩やかな法友の繋がり(ロータスネットワーク仮称)を希望する方が、多くの人が集い、真言唱えるなどのお祈りができる場所(個人宅で水香花などの供養)での奉納を希望します。
奉納時には、「南無阿弥陀仏」「オンマニペメフン」「南無観世音菩薩」「OM AH HUM VAJRA GURU PADMA SIDDHI HUM 」を、また自分にとって親しいお祈りをご念誦ください。また「金剛七行祈願文」「サンパルンドゥップマ」などを念誦いただければありがたいです(テキストは追って配信します)。
石仏板は三尊が一箱に収められています。
基本は元払いで無償配布させていただきますが、1000体の無償配布費用負担は世話人達の持ち出しとなっていますので、浄財喜捨として着払いで受け取っていただければありがたいです。着払いでのご協力に感謝いたします。
奉納等の詳細については、メールや電話にて個別にご相談させていただきます。
菩薩行の相互関係から、心ある繋がりと仏法の可能性を願っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
〜 OM AH HUM VAJRA GURU PADMA SIDDHI HUM 〜

<奉納方法に関するインストラクションのご案内です>
一尊石仏板毎に、下記の報告が必要です。以下のメールにお願いします。

1.各奉納の文字報告をお願いします。
・自分が責任を持って受け取った仏像合計数
・奉納者の名前+日付+奉納した石仏板のシリアル番号
・奉納場所の住所+簡潔な説明
例)山田太郎 pr001/1000(2024年11月6日)
日本 oo県zz市1丁目 阿弥陀川の谷へ奉納した。
日本 xx県v v郡kk村108 gg山 観音山頂森林根元に奉納した。
日本 y y県tt市rr町6-9 カイラス山シャンバラ寺 仏殿に奉納した。
注意)山川湖神社寺など公地私有地敷地内への奉納は良識責任内でお願いします。最良は、地元国御霊を持つ方と一緒に行うか理解を得るのが良いと思います。

2.Googleマップのスポットリンクとスクリーンショットの2枚の報告は必須といたします。仏像送付者もしくは各担当責任者に連絡ください。
「Googleマップのスクリーンショット」が不要となり、替わりに
「奉納場所で取ったコンパスAppのスクリーンショット」が必要となりました。
注意)位置情報をオンにした上で、コンパスを使用してください。
よろしくお願いします。

3.仏像が鮮明に写り奉納過程の様子、周辺環境が分かる10秒位の動画をお願いします。
動画のポイント:
1. 仏像がはっきり写っている。
2. 設置過程が分かる。
3. 周辺環境風景が分かる。
4. 10秒位の動画があると良い。

*奉納時に、お経、真言、念仏、題目など、利他の気持ちで心から唱えることをお願いします。
*奉納報告はリンポチェからの要望です。私たちが仏像を妥当に奉納したことを証明することで、チベット寺からのお祈りが成就します。よろしくお願いします。
*仏像を奉納した後には、空に晴れの虹が出たりすることもあります。写真かビデオに収めることも、設置前後の吉祥な現象報告もありがたいです。
*仏像の設置は早ければ早いほどいいです。必ず木龍年以内=西暦2025年1月29日(水)までに奉納頂きたいとのことです。
*設置場所、設置の数は外部に漏らさない。プロジェクト参加者であっても他言無用でお願いします。
*神社お寺の許可理解を得てお願いします。お寺に奉納であっても他言は無用でお願いします。
以上がリンポチェからのお願いです。
どうぞよろしくお願いします。

 「2030年の鉄の戌年にこの世で大きな戦争が起こるだろう。災難を避けるために、バジュラグル真言を唱え、この真言を石や崖に刻め。すべての霊地の谷底に仏塔を置き、そこに四大要素の乱れを避けるグル・リンポチェの仏像を置き、神仏がそこに留まるよう依頼せよ。それを高い雪山、山頂、森林の中に置き、湖や海の底に沈めたり、地下に埋めたりすれば、敵対者の魔に邪魔されないことは明らかである。鉄の犬(2030年)の障害は、水の雄龍の年(2024年)以降に避けることができる(要旨)」

ディルゴ・キェンツェ・リンポチェの4行の要決

ディルゴ・キェンツェ・リンポチェの4行の要決

བླ་མ་མ་བརྗེད་རྟག་ཏུ་གསོལ་བ་ཐོབ། །

lama ma jé tak tu solwa tob

上師を忘れることなく、常に上師に祈るように。

རང་སེམས་མ་ཡེངས་རང་ངོ་རང་གིས་ལྟོས། །

rang sem ma yeng rang ngo rang gi tö

心を乱すことなく、常に心の本質を見つめるように。

འཆི་བ་མ་བརྗེད་ཆོས་ལ་བསྐུལ་མ་ཐོབ། །

chiwa ma je chö la kul ma thob

常に死を忘れることなく、ダルマの修行に励むように。

སེམས་ཅན་མ་བརྗེད་སྙིང་རྗེ་བསྔོ་སྨོན་གྱིས། །

semchen ma je nyingje ngo mön gyi

衆生を忘れることなく、常に慈悲の功徳を以て、菩薩の請願を掲げるように。

霊咊のビジョン1) 文殊の智慧から時輪タントラが説く世界最終戦争

令和と霊咊の日本的霊性より (抜粋)

第三章 般若心経より深まる日本的霊性
4 文殊の智慧から時輪タントラが説く世界最終戦争

 約二千年前に般若経が成立して以来、般若の智慧である空性の教えは、その後数世紀を かけて膨大な般若経典群として編纂され、その境地から大乗仏典が編纂されてきました。そして六世紀頃には、密教経典へと展開し、ゾグリムやキェーリムという複雑な密教実践行を伴い、八世紀以後には後期インド密教へと発展していきます。
般若の智慧は「三人寄れば文殊の智慧」と言われるように、文殊菩薩は、般若経典群の空の哲学的シンボルです。また文殊菩薩は弥勒菩薩との問答において、弥勒菩薩が未来仏となることを受記 ( 予言 ) します。文殊の智慧は、ブッダの智慧、一切智(サルバジュニヤー ナ)と同等の本質を持ち、大乗仏典や密教では最も重要な見解(けんげ)となっています。
 そして、この空なる文殊の智慧は、後期インド密教無上ヨーガタントラにおいて、「マンジュシュリーナーマサンギーティ ( 文殊師利真実名経 )」という密教経典として編纂されます。この密教経典において文殊とは菩薩の存在以上に、三世十方諸仏の本質である本初仏 ( アーディブッダ ) という根源的なブッダの本性である法身としての文殊如来、文殊金剛と呼ばれる尊格へと深化していきます。
 密教経典は、密教行者たちの深い瞑想体験の中から次々と展開し、その境地が纏め上げられ編纂されていきます。特に、金剛頂経系の無上ヨーガタントラでの智慧の開示は、幻化網タントラ(マーヤージャーラータントラ)という密教経典へと展開しました。そして、幻化網タントラの智慧の秘密を解くようにマンジュシュリーナーマサンギーティとして、本初仏、法身文殊如来の智慧が説かれたのでした。

マンジュシュリーナーマサンギーティでは、文殊金剛の様々な名前とその数多な徳を呼びかけます。文殊金剛には、五智如来の智慧と功徳の全てが内在しています。つまり、ブッ ダの智慧の本質が、五智如来の曼荼羅として開示され、その密教的シンボルが文殊金剛に濃縮されていると理解されます。
 「オンアラパツァナディ」という文殊の真言は、五智如来の智慧の各一字真言である「ア・ ラ・パ・ツァ・ナ」が、文殊金剛の一字真言「ディ」に集約されています。般若の智慧が 千年近くかけ、その本質が醸され円熟し、智慧の本質を示す密教経典「マンジュシュリーナーマサンギーティ」として編纂されたのです。
 般若経典群が般若心経に集約され、密教的境地がマンジュシュリーナーマサンギーティ として、文殊の智慧が結実したとも言えます。タルタン・トゥルクは、文殊の智慧のマン ジュシュリーナーマサンギーティこそが、世界平和へと開く智慧と感得し、ブッダガヤ世界平和セレモニーで一万人のラマ僧と共に十万回読経する法要を毎年続けています。

 そして文殊の智慧は、更に「時輪タントラ ( カーラチャクラタントラ )」という後期インド密教最後の密教経典として編纂されていきます。時輪タントラは、マンジュシュリーナーマサンギーティを基底にし、その教えが派生するように十世紀頃から編纂されます。一説によると、ナーランダ大学の学匠でありマハームドラーの祖の一人であるナロパが編纂に当たったと言われています。この教えは長くシャンバラ国という霊的聖地に保存され、時代が熟した時に開示されると説かれています。
 時輪タントラの内容は、外伝、内伝、別伝と構成されています。外伝には、須弥山を中心に宇宙が成り立ち、地水火風の四大を基盤とし、惑星、星座、星などのマクロ的宇宙観 と時間観が説明されています。内伝では、衆生の身体が地水火風の四大と空と智慧を合わ せた六大のミクロ的宇宙として説明され、チャクラヨーガを修することで「金剛身」を得 ることができると説かれます。時輪タントラには、宇宙と時間のマクロ宇宙と微細な身体であるミクロ宇宙の浄化が説かれています。

 十世紀頃から次第にイスラム教集団によるインド大陸侵略に直面していった世界情勢から、時輪タントラの別伝には、未来において「世界最終戦争」が起こると予言しています。 この世界最終戦争に対する準備のために、密教行を修行し、新しい時代へと導く役割があることを説いています。
この世界最終戦争は「一神教と多神教の戦い」であると言われ、そのために、時輪タントラ密教行者は、密教ヨーガ行を行うことで「金剛なる空の鎧」を身に纏い、般若の智慧の境地「マハームドラーの智慧」を保ち、世界最終戦争に臨んでいくことが説かれています。ここで重要な視点は、中観哲学が説く「離一多」の般若の智慧のです。一神教でも多神教でもなく、極端の二辺を離れた般若空の境地、ここがマハームドラーの智慧です。
 十三世紀初頭、イスラム勢力は中央アジアから北インドに侵攻しインド大陸を征服し、ナーランダ大学やビクラマシーラ大学、ブッダガ ヤなどの仏教拠点が次々と破壊され、十三世紀初頭、インド仏教は滅んでしまいます。もしも時輪タントラから更に密教経典が 編纂されたなら、現代物理学に通じるマクロ宇宙とミクロ宇宙の研究へと深まったのでは ないかと推測します。また世界最終戦争から、新たな時代へと開く弥勒の世への教えと展開したのではないかとも思います。
 八世紀チベット吐蕃時代にパドマサムバヴァがサムイェー寺院にインド密教を移植します。十世紀頃からイスラムの侵入に危機感を持ったインド仏教の学者や行者たちがチベットに仏教の存続に賭けます。十一世紀、ビクラマシーラ大学学長のアティーシャは、仏法の灯火を託し入蔵しました。その後、インド仏教はチベットにチベット仏教として守り伝えられます。しかし皮肉な時代の変遷が起きます。一九五九年中国共産軍がチベットを侵略し、今まで保存されていたチベットの智慧が破壊されてしまいます。中国共産主義は一神教と捉えることができます。インドに亡命したダライ・ラマ十四世は、時輪タントラの灌頂を世界平和への方便として授け、世界中の人々が学ぶ機会を設けています。

ディルゴ・キェンツェ・リンポチェの4行の要決

ディルゴ・キェンツェ・リンポチェの4行の要決

བླ་མ་མ་བརྗེད་རྟག་ཏུ་གསོལ་བ་ཐོབ། །

lama ma jé tak tu solwa tob

上師を忘れることなく、常に上師に祈るように。

རང་སེམས་མ་ཡེངས་རང་ངོ་རང་གིས་ལྟོས། །

rang sem ma yeng rang ngo rang gi tö

心を乱すことなく、常に心の本質を見つめるように。

འཆི་བ་མ་བརྗེད་ཆོས་ལ་བསྐུལ་མ་ཐོབ། །

chiwa ma je chö la kul ma thob

常に死を忘れることなく、ダルマの修行に励むように。

སེམས་ཅན་མ་བརྗེད་སྙིང་རྗེ་བསྔོ་སྨོན་གྱིས། །

semchen ma je nyingje ngo mön gyi

衆生を忘れることなく、常に慈悲の功徳を以て、菩薩の請願を掲げるように。

閻魔堂みのくよう

閻魔堂みのくよう
ー南の閻魔堂法要ー
場所:南の閻魔堂 岐阜市領下1-7-1 
   岐阜市立厚見中学校の北東 コミュニティバス閻魔堂前
日時:2023年10月7日(土) 午前11時より(15分ほど)

本年10月7日は、旧暦8月23日です。1600年8月若き岐阜城城主、織田秀信(信長の孫)は西軍に就くことを決断し、厚見領下の閻魔堂前に本陣を敷いたことから、関ヶ原の戦いの前哨戦「乱闘橋の戦い」が起こります。8月23日岐阜城は落城し、秀信は円徳寺に逃げ落ち剃髪します。
この度、加藤家のご理解を頂き閻魔堂を開堂し、旧暦みのくようの法要を執り行う運びとなりました。
有縁仏縁、心ある方々のご参加いただき、ご一緒に 「みのくよう」をお祈りいただければ幸いです。
中世から戦国へそして近世の徳川時代への時代の転換、仏縁地である「閻魔堂」にて、日本の重要な因縁の地で鎮魂の祈りを「みのくよう」と名して、法要を行います。

チベット仏教金剛乗ニンマ派
ウッディヤーナ山タルタン寺
林久義

円徳寺みのくよう ー岐阜城落城鎮魂法要ー

2023年 チベット仏教講座特別法要のお知らせ
円徳寺みのくよう
ー岐阜城落城鎮魂法要ー
場所:円徳寺 岐阜市神田町6-24 名鉄岐阜駅より北へ徒歩5分
日時:2023年8月23日(水)午前11時より(30分ほど)

今月は特別に「円徳寺みのくよう ー岐阜城落城鎮魂法要ー」と名した法要を行います。
1600年8月21日、若き岐阜城城主、織田秀信(信長 の孫)は西軍に就くことを決断し、厚見領下の閻魔堂前に本陣を敷いたことから、関ヶ原の戦いの前哨戦「乱闘橋の戦い」が起こります。
翌々日23日岐阜城は落城し、秀信は円徳寺に逃げ落ち剃髪します。
中世から戦国へそして近世の徳川時代への時代の転換、仏縁地である「円徳寺」にて、日本の重要な因縁の地で鎮魂の祈りを「みのくよう」と名して、法要を行います。

有縁仏縁、心ある方々のご参加いただき、ご一緒に 「みのくよう」をお祈りいただければ幸いです。

チベット仏教金剛乗ニンマ派
ウッディヤーナ山タルタン寺
林久義

クムニェ ニンティク・ツァルン

クムニェ ニンティク・ツァルン

私が教えている基本的な訓練の一つに、クムニェという瞑想ヨーガがあります。これは、身体運動と瞑想を組み合わせたようなもので、チベット密教の中でもゾクチェン瞑想のツァ・ルンという伝統的なニンマ派の教えに基づき、それに新しい要素を付け加えたものです。仏教では伝統的に、人間の心と身体の中には自分自身をはぐくみ、健康にしてくれる自然治癒力というエネルギーがあると教えています。しかし一般に西洋人は、病気になってしまうか、あるいはこのエネルギーがなくなってしまわない限り、深めようとはしません。単なる肉体的運動や体操は、いわゆる自然治癒力に対しては余り効果がありません。

 しかし、クムニェはより深いところにとどきます。ですから、ヨーガと瞑想を組み合わせたようなものと言えるのです。その上、クムニェは非常に簡単で誰でも行うことができます。つまり、クムニェを教えるということは、自分で自分の心身をリラックスさせることのできるマニュアルを与えてあげるようなものなのです。

 チベット語でクムニェとは、心と身体をマッサージするという意味です。厳密に言えば、身体は全感覚器官と深く関わっており、その感覚領域を開いてゆくことで内なるエネルギーに触れることができます。マッサージというのは、この感覚をはぐくみ、エネルギーを拡大させることで、身体と心のバランスをもたらします。呼吸もまた非常に重要な要素です。呼吸は微細なレベルで自覚と密接な関係があるので、呼吸の自覚を深めることが、クムニェの非常に重要な要訣といえるでしょう。

 このクムニェの訓練を通して、私たちは単なる衝動ではなく、自覚によって自らの行動を律することを学ぶことができるわけです。

夢ヨーガ  チベット仏教 至宝の瞑想 第六章ヴィジョンより