クムニェ ニンティク・ツァルン
私が教えている基本的な訓練の一つに、クムニェという瞑想ヨーガがあります。これは、身体運動と瞑想を組み合わせたようなもので、チベット密教の中でもゾクチェン瞑想のツァ・ルンという伝統的なニンマ派の教えに基づき、それに新しい要素を付け加えたものです。仏教では伝統的に、人間の心と身体の中には自分自身をはぐくみ、健康にしてくれる自然治癒力というエネルギーがあると教えています。しかし一般に西洋人は、病気になってしまうか、あるいはこのエネルギーがなくなってしまわない限り、深めようとはしません。単なる肉体的運動や体操は、いわゆる自然治癒力に対しては余り効果がありません。
しかし、クムニェはより深いところにとどきます。ですから、ヨーガと瞑想を組み合わせたようなものと言えるのです。その上、クムニェは非常に簡単で誰でも行うことができます。つまり、クムニェを教えるということは、自分で自分の心身をリラックスさせることのできるマニュアルを与えてあげるようなものなのです。
チベット語でクムニェとは、心と身体をマッサージするという意味です。厳密に言えば、身体は全感覚器官と深く関わっており、その感覚領域を開いてゆくことで内なるエネルギーに触れることができます。マッサージというのは、この感覚をはぐくみ、エネルギーを拡大させることで、身体と心のバランスをもたらします。呼吸もまた非常に重要な要素です。呼吸は微細なレベルで自覚と密接な関係があるので、呼吸の自覚を深めることが、クムニェの非常に重要な要訣といえるでしょう。
このクムニェの訓練を通して、私たちは単なる衝動ではなく、自覚によって自らの行動を律することを学ぶことができるわけです。
夢ヨーガ チベット仏教 至宝の瞑想 第六章ヴィジョンより