鉄の戌年における暗黒の時代の妨げを回避するための警句(全文)

鉄の戌年における暗黒の時代の妨げを回避するための警句(全文)

 三宝は、揺るぎのない最勝の帰依処である。パドマカーラ(パドマサムバヴァ)は、この堕落した暗黒の時代(カリユガ)に仏法と衆生にとっての唯一の保護者である。応身テルトンは、時が熟すと世に現れ、必要な方便で衆生を救済する。彼らの慈悲を感じることで、衆生の信仰と畏敬は深まる。

 深遠なる啓示の宝の海テルマ(埋蔵教法)から全ての予言をまとめた師たちが、我々が何をすべきか、何を避けるべきかを明確にし、ヤチェンの大法会において伝えた。
 この警句は、キャブジェ・カンサル・テンぺ・ワンチュク・リンポチェがそれらのテルマを精査し、グル・リンポチェ、パドマサムバヴァの偉大な埋蔵教法発掘者たちの予言をすべて編纂したことによるものである。その結果、テルマでは、2030年(庚戌)に世界で大きな戦争が起こると予言されていたことを発見した。カンサル・テンぺ・ワンチュクに帰依し、この狭くて危険な道を解放するために、師たちの法力の方便に精進することが賢明であろう。

 テルマ発掘者ジグメ・ヌデン・ドルジェの予言にはこうある。

 「ドゥルカの18の軍隊は108種類の武器と鎧を携えるだろう。彼らの食べ物、言語、衣服はすべて(私たちとは)異なる。”彼らは皆、満足感のない過激派である」

 また、キャブジェ・チャタール・サンゲ・ドルジェは、『不運な時代の戦争を避けるために勝義の菩提心を促す祈願文』の中で次のように述べている。

 「閃光の力。暗黒の魔力の軍勢は、心ある者たちを焼き尽くし、地球を崩壊させる核兵器で武装し崩壊させるであろう。邪悪な意志を持つ魔の武器がハリケーンの如く呑み込む。一瞬のうちに、世界を破壊し、すべての人々を原子の塵にする。この邪悪な魔の道具は見ることも、聞くことも、考えることも容易だが、無知な凡夫は、混乱と疑念の罠の網にかかり、頑なに理解しようとはしない」

 このようなテルマの警句や他の多くの警句に基づけば、核兵器に関わる深刻な戦争が、この世界で将来起こらないという確証はない。さらに、多くの師たちがその危機を鑑み、このような可能性を心されている。この戦争は、洋の東西を問わず、すべての国々の政府、伝統、国民にとって、絶対に害をもたらすものであり、何の利益ももたらさないだろう。この悲惨な災いを避けるために、相互依存のカルマの法理を理解し、災いを避けるための多くの方法がテルマの予言に述べられている。
 テルトン・ジグメ・ヌデン・ドルジェの『予言の目録』には、こう示されている。

 「それ故に、将来、この大災害を避けるために、次のようにしなさい。水が湧き上がる前にダムを作るように、一度起こってしまったら、どうやってその災害を元に戻すことができるだろうか」
「最も高い山の頂にオーギェンリンポチェ(パドマカーラ)の像を置き、四方にバジュラグル祈願の仏旗(タルチョ)を掲げ、吉祥と願望の詩文を唱えなさい。バジュラグルの真言を昼夜声に出して唱え、『自然成就祈願文』を唱え、バジュラグルの真言を石や崖に刻みなさい。これらはこの深遠なテルマからの、戦争を避けるための特別な方法である」

更に、

 「すべての土地とそれぞれの谷の底に仏塔を置き、その中に四大要素の乱れを避けるグル・リンポチェの像を置きなさい。仏塔を聖別し、神々が仏塔の中に留まるように要請し、あなたの資質に応じて大小の仏塔を作りなさい」
 『カギャマの予言』にはこのように示されている。

 「五大元素の女神の建造物の中に、各元素の輪とその種子真言、貴重な物質、薬、穀物、色とりどりの絹を置く。それらをよく吟味し山の頂に埋め、吉祥の詩文、誓願の詩文、奉献の詩文を唱えれば、元素の攪拌が静まり、自然の均衡が保たれ、すべての土地に安らぎと善の性質が高まる。四方八方にダルマに即した戒律を実施することで、それが実践される場所に幸福がもたらされる」

 更に、

 「五種のドゥルカを避けるため、他の手段を達成できなくても、主に重要な人々、裕福な人々、その他の信仰深い人々は皆、縁起の良い場所に集まり、本物の仏塔を建立し、その中に、五色の糸で編まれた網の中に集めた武器を下に向けて置きなさい」
 「この行により、あらゆる悪霊、怨霊、侵略者を調伏せよ。
 法力あるヨギにこのような行を奉献してもらい、供物を捧げ、祈願すれば、武器の災いが減り、その地域で戦いや争いが起こらなくなり、外敵の魔軍も阻止される。
 また、多くの霊薬を集め、アムリタを作る行をすべし。霊薬を山ほど仏塔の中に納め、それらを聖別すべし。そすれば、病気の害は起こらない。あるいは、多くの種類の穀物を集め、仏塔の中に置き、上記のようにすれば、飢饉から解放されるであろう」

 偉大なるテルトン・ドゥジョム・リンパの深遠なるテルマにはこう、示されている。

 「敵対する軍隊に完全に勝利するナムギャルの仏舎利塔は、すべての土地にあまねく吉兆なる様々な縁起をもたらし、相互依存の縁起から良きカルマを得て、邪悪な願望を持つ魔(マーラ)によって征服されることはない。もし汝が、それぞれの土地に1つずつ仏塔を作ることができるならば、100年間、魔の邪悪な教えを避けることができるだろう」

 また、テルトン・リグジン・オーゲン・シェラブのテルマの予言には、こうも述べられている。

 「魔に勝利するオディヤーナ寺院(サンドゥぺルリ)を建立すること、因果応報の教えを敬い、世俗の悪行の教えを排除すること、善悪識別の教えを尊重すること、先祖代々の霊的伝統を維持すること、護摩供養を行じること、願望成就の供物を捧げること、祈りの仏旗を掲げること、これらは有害で邪悪な力を避けるための奥深い方法である」

このような予言は他にも多くある。カンサル・テンぺ・ワンチュクもまた、これら暗黒の時代の回避法が、主に3つの方法に集約されると教えている。

1)グル・リンポチェの像と仏塔を建て、四方の魔を調伏する。
2) 広範なサンパ・ルンドルブマ(自然成就の祈願文)、またはその凝縮形であるダグぺ・シンチョクマ(Dagpai Shingchog-ma)とバジュラグルの真言を唱える。これらの祈りの仏旗を四方に置き、その上に願望と吉祥の詩文を唱える。
3) 弥栄のバジュラキーラの行を以て魔を焼き尽くし、調伏する善行を行う。

 グル・リンポチェ、パドマサムバヴァの仏像については、可能であれば、自分の状況に応じて、手段、場所、時間など、どんな大きさでも質でもよい。すべての魔を調伏するグル(ナンリ・ジノン)の仏像ならばなお良い。そして、この仏像をマントラで正しく満たし、聖別し、上記の霊地に祀ることが重要である。

 ストゥーパについては、24の聖地、8つの納骨堂、タドゥル・ヤンドゥル(ソンツェン・ガンポの治世に作られた4つの重要な僧院)のような重要な霊地、この世の東西南北の雪山や山頂、川沿い、海、地域の分岐点、川の交差点、多くの人々が集まる場所に作るべきである。
 仏塔の大きさは、大きいものは何階分もの高さが必要だが、中くらいのものは1階から人の背丈までのもの、小さいものは人の腕の大きさくらいのもの、非常に小さいものは指の長さほどの仏塔を作ることが説かれている。
 また、108の仏塔を作る儀式や、すべての経典やタントラの中でも、ツァツァは実際の仏塔であると言われている。これらは簡単に作ることができ、非常に効果的である。だから、魔を調伏するための勝利の仏舎利塔をマントラで満たす奉献し、健全な菩提心を動機として、高い雪山、山頂、森林の中に置いき、あるいは湖や海の底に沈めたり、地下に埋めたりすれば、敵対者に邪魔されないことは明らかである。

 同様に、このような困難な時を回避する方法として、他の何よりも賞賛されるのは、バジュラグルの真言を何億回も繰り返し繰り返し集団で念誦し、他の人にも一日中唱えるように勧めることである。また、「自然成就の誓願文」やその凝縮文ダスぺ・シンチョクマを唱えることであり、五色の祈りの仏旗を刷って吊るし、風に吹かせること、水や炎で回るマニ車を作ること、マントラや祈願文の録音を常に流すことも良い。あらゆる方法で努力しなければならない。

 チャタール・サンゲ・ドルジェは、先に述べた誓願文の奥付でこう述べている。

 「地球環境と生きとし生ける衆生を瞬時に破壊する力を持つ核兵器が使用されうる、未だかつて起こりえなかったが、現在では全人類を死に至らしめる破壊的な戦争が起こる危険な兆候が日に日に高まっている。故に、現代の危機的な状況の中で子が母を呼ぶように、オーゲン・ペマの守護を求めることで、耐え難い悲しみと激しい恐怖による行動を調伏すべきである。今、誰もがこの祈りを心から唱え、三宝の帰依処である大海の宝石のような菩提心を起こすべきである。そして、この祈りの仏旗を山の頂や川の橋などに吊ると良い。これは重要な仏事であり、衆生に多大な功徳をもたらすと私は信じている。故に私を信じる者は誰もが心に留めておくべきである」

 ここで述べられている多くの師による警句は、我々が実行するに値する菩薩行であり、しかも簡単にできることであるから、皆が努力することを心から願っている。更には、集団で行うバジュラキーラに基づくドゥプチェン(成就会)を行うことは、魔を調伏し、焼き尽くし、良きカルマををもたらす善行である。
 先のヌデン・ドルジェの『予言の目録』には、

 「特に、魔を回避するこの深遠なる貴重な宝の儀式を行いなさい。毎月旧暦の10日にトルマとツォの供養を捧げ、仏陀の過去世の讃歌を唱えよ。その土地霊に護摩供養(サン)を行い、御堂を建て三宝を供養し、宝瓶を埋めよ。山や湖で沐浴し、祈願が成就するよう供物を奉げ、神仏への讃歌を唱えよ」

 ここに示された供養法は、特定の伝統にこだわることなく、あらゆる伝統に伝承される霊性を敬う修行者たちの集会(しゅうえ)において、神仏や精霊を敬うこと、山河を清めること、また自身の身口意を清めること、自然環境の汚染や生きとし衆生の低下を再生するために宝瓶を埋めること、そして護摩供養を修法すること、これらの行を修することは極めて重要である。

 故に、以上の警句を肝に銘じ、仏法を信ずる者は、悪行を避け善行を行い、特に魚や動物の放生会を行い、非暴力平和の道を求め、持てる方便力と法力の限りを尽くし、仏果を求める最勝の誓願を以て、密教行を深めてゆくことを勧める。
 災難を避けるために、このような方法で努力しなければならない時期については、先に引用したヌデン・ドルジェの宝の文章にこう書かれている。

 「オーゲン・ペマを想起するのは、危険な峠にさしかかった時で、快適な平原にいる時ではない」
 「鉄の戌(2030年)の災難は、水の雄龍(2024年)以降に避けることができる。この方法は敵を倒すものであるから、間違いなく回避されるであろう」

 また、テルトン・ドゥジョム・リンパの予言の中では、こう述べられている。

 「戌年に蛮族の思想が広まるだろう。辰年には、これらを回避する法要を施しなさい。一つの寺だけでなく、全ての寺でこれらの法要が行なうべし!」

 このように、一、二カ所の寺だけでなく地域や世界のすべての人々が、予言の時期が過ぎる前に、今、これらの密教行を油断することなく実践しなければならないと、私は願っている。このことを真剣に心に留め精進してていただきたい。

 この特別なテルマの予言からの警句は、オーゲン・ドメ・リンパの六番目の化身、ゴチェン・ギャルウェ・トゥルクの名を持つナムチャク・サンガグ・テンジンが、第17周期(2022年)の水虎年、旧暦4月(サガ・ダワ)29日に詠んだものである。

2022年8月、ラマ・ペマ・チョペルが編集した。

1 センカル(別称テンカル)とは、山の上に置かれた小さな御堂のことで、その中には土地神の仮面のようなものが祀られている。