ブッダガヤ世界平和セレモニー(モンラムチェンモ)
毎年チベット暦12月、仏陀成道の地インドのブッダガヤで、チベット仏教のラマ僧約1万人が菩提樹の元に集まり、世界平和を祈願する法要「モンラムチェンモ」を行なわれています。1989年よりタルタン・トゥルク・リンポチェの呼びかけで始まったこの法要に、私は当初から運営組織委員として関わり、亡命チベット社会の生きた状況と現実を見てきました。
師と私達の支援組織チベタンエイドプロジェクトは毎年チベット経典の復刻版を制作し、参加僧侶に無償配布をしています。今までに大乗経典類や密教教典など約百万冊が各寺に配布してきた。散逸する危機にある経典の開版は、子弟育成には重要な事業です。また各寺に対し僧侶の食費学習費、寺院修復費儀式費を毎年喜捨しています。
法要は十日間読経が続けられ、数万のチベット人による心からの祈りが捧げられます。大塔の周りには早朝から深夜まで十万もの灯明が灯され、香や供物が捧げられ、祈りの鐘の音が鳴り響く。この法要にはインド各地の亡命ラマ僧だけでなく、中国領チベットから命がけでヒマラヤを越えて参加するラマ僧達がいます。
1959年3月、チベットは中国共産軍の侵略を受け、ダライ・ラマ以下十万ものチベット人がインドに亡命しました。以来チベットは中国に占領され、僧院の破壊や僧侶の虐殺など、千数百年に及ぶ仏教文化が危機的な状況に追い込まれています。チベットは国土を奪われてから53年が経つが、心の光明である仏法を奪うことはできませんでした。
「モンラムチェンモ」は無一物のチベット人達による心からの祈りなのです。
2012 岐阜新聞素描より