ブッダガヤ世界平和セレモニー 

モンラム・チェンモ/ブッダガヤ世界平和セレモニー

毎年、チベット陰暦12月1日から10日間、釈尊成道の地インドのブッダガヤで、チベット仏教のラマ僧ら約1万人が集まり、世界平和を祈願するセレモニー、モンラム・チェンモが行われています。この法要は、1989年からタルタン・トゥルク・リンポチェの呼びかけによって始まり、インド、ネパール、ブータンに居住する亡命チベット僧や在家修行者らが、また何よりも中国領チベットから命がけでヒマラヤを越えて、多くの仏道修行者がこの法要、モンラム・チェンモに参加しています。


セレモニーは朝7時半より、仏舎利塔の各方位にニンマ派六大寺院の各座主を中心にしてラマたちが集い、読経が始まります。経典はマンジュシュリー・ナマ サンギーティー(文殊師利真実名経)などが唱えられます。この経典はブッダによって直接説かれた重要な経典であると言われ、特にチベット仏教の伝統では経典とタントラの両方の心髄が説かれていると教えられています。また、末法の世に苦しむ人々を救済する、一番の妙薬であるとも言われています。仏教徒にとっ て最も重要な聖地でこのパワフルな経典を唱えることで、五濁悪世の世の中にダルマの光を投げかけようと、心からの祈りが夕方まで捧げられています。

この世界平和セレモニーには、チベットの人々が尊敬する多くのラマ が参加されています。91年秋に遷化された元ニンマ派管長ディルゴ・キェンツェ・リンポチェ。その後の結集で正式にニンマ派の新管長になられたペユゥル寺院座主ペマ・ノルブ・リンポチェ。ミンドロリン寺院座主ミンリン・ティチン・リンポチェ。セチェン寺院座主セチェン・ラプジャム・リンポチェ。ゾクチェン寺院座主ゾクチェン・リンポチェら六大寺院の各座主。そしてチャプタル・リンポチェ、ドゥムジュム・リンポチェ、ゾンサーキェンツェ・リンポチェと多くの 名だたる高僧、学僧、ヨーガ行者が参加されています。そして、インド・ネパール各地にある数百もの各寺院から多くの僧侶が参加しています。
93年からはニンマ派だけでなく、カギュ派、サキャ派は釈尊誕生の地ルンビー二で、ゲルク派は初転法輪の地サルナートで世界平和供養が行われてます。タルタン・リンポチェの長年の努力によって、全宗派からの理解を得て実現することになりました。

タルタン・トゥルク・リンポチェとチベッタン・ニンマ・メディテーション・センタ一(TNMC)は、毎年チベット経典の復刻版を制作し、参加者に配布しています。今までに、大乗経典類、般若経典類や密教教典など、数十万冊が各寺に配られてきました。また、多くの仏画が僧、行者、信者、全ての参加者に配られてきました。散逸する危機にある多くの経典を開版することは、チベット仏教子弟育成には欠かせない事業です。
TNMCのチベット援助基金からは毎年各寺に対して、僧侶への食費、学習教材費、儀式供養費、寺院修復費が喜捨されています。また学僧とのペンフレンド交流も行われており、その地道な活動は30年以上も続けられています。

世界平和セレモニーは10日間読経が続けられ、参加者数万のチベット人による心からの祈りが捧げられます。仏舎利塔の周りには、朝早くから夜遅くまで十万個ものバターランプが途切れることなく灯し続けられ、香が焚かれ、 供物が捧げられ、祈りの鐘の音は途切れることなく鳴り響いています。このセレモニーの間、ブッダガヤは辺り一面赤い法衣をまとった僧侶に溢れ返り、仮設の巨大なテントが設置され、さしずめ数万人余りの仏教徒の町ができたかのようです。

1959年3月、チベットは中国共産軍の侵略を受け、ダライラマ以下数万人のチベット人がインドへの亡命を余儀なくさせられました。以来チベットは中国の占領によって、ほとんどの僧院が破壊され、多くの僧侶が虐殺され、 数千年にも及ぶチベットの仏教文化が消滅寸前という危機的な状況に追い込まれています。一方、亡命チベット人にとっても住居や食料など亡命生活の基盤を確 立することが困難であるという辛い状況と共に、中国領チベットと同じく後継者問題経済問題など、チベット仏教の伝法にとっての危機的な状況が今も続いています。

このブッダガヤ世界平和セレモニーには、各本山寺院の座主、高僧、 学僧、ヨーガ行者など、チベット人が尊敬する多くのラマが参加されていることで、多くのチベット人の信仰と修行を励まし、またチベット仏教法脈の継承にとっての力強い助けとなっています。チベットは国土を奪われてから、すでに45年以上が経っていますが、心の光明である仏法を奪うことはできませんでした。世界平和セレモニーはそんな無一物のチベット人達による心からの祈りと言うことができるでしょう。また世界平和とは政治的な働きだけではなく、全ての人々に心の解放をもたらす仏法の灯火を守り伝えることが、この混沌に満ちた現代にとっては特に必要なのかもしれません。

ブッダガヤ世界平和セレモニーは、チベット仏教徒だけではなく、世界中の仏教徒の参加を広く呼びかけています。日本からも一人でも多くの仏道修行者が、自らの仏性を確認するため、菩提樹の元に集うことを心から願っています。